今年は学会発表を2つやることにしてしまって,かなり大変なことになっています。まずは1つ目の概要です。
■日本人間性心理学会第28回大会
・題名:中途身体障害者の心理的回復過程におけるスピリチュアリティの萌芽
・日時:2009年8月29日(土)16:15〜17:45
・場所:法政大学多摩キャンパス 現代福祉学部棟3F302
・備考:発表論文やプログラムは下記URL(トップページ)からたどれます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/jhp2009/ 内容としては修論の未発表部分で,今までの雑誌論文や学会発表は修論の中の中心的な部分だったのに対して,関心は強かったものの慎重に扱うべきテーマだったので控えめに記述していたのが今回のテーマです。スピリチュアリティというテーマの扱いには,今でも慎重にとは思っています。あまりに多義的になりすぎて誤解を招く可能性があることや現実離れした観念的な方向に流れやすいことなど,いろいろと考えておかないといけないと思っています。経緯は上記の発表論文を見ていただければわかると思いますが,定義は「いのちの尊さを感じるような深い情感を伴う,時間・空間あるいは日常性を超えたつながりの感覚」としています。人間性心理学は人間の成長可能性について考えるという側面を持ちますし,スピリチュアリティという用語も人間の高次の人格を主に扱うものと考えています。
さて,人生の中途で身体に障害(「障碍」「障がい」という用語が広まりつつあることも理解していますが原文の用語で統一します)を負った場合に限らないと思いますが,死に直面するような体験をした人々の中には,それを機に人格的な変容が起こることがあります。それはポジティヴな方向ばかりではないことも承知していますが,ポジティヴな方向である場合,スピリチュアリティが芽生えていくことがあり,時には生き方そのものが大きく変わっていくこともあります。いわば「生きる力」の発現とでも表現すればいいのか,どのようなきっかけでそういうものが芽生えるのかというのは,カウンセリング/心理療法に携わる者としては強い関心があります。いや,僕の元々の対人援助職を目指したきっかけは,中途身体障害者の「生きる力」に感銘を覚えた体験ですから,その関心が続いているという方が正しいでしょう。その上で,専門職としても大いに関心を向けているということになります。
修論に取り組む前は,スピリチュアリティが芽生える時には何か大きな出来事があるような感じがしていたのですが,きっかけというような点ではなく,もっと長いスパンでいろいろなことがあって変わってくるということでした。ただ,本質的には恐らく物事を捉える方向というか質が変わっていて,言ってみれば大きなリフレーミングが起こっているという感じでしょうか,何か認知的な構造自体が変わっているような感じで,その上に様々な出来事が付加されていって意識できるものとして浮かび上がってくるのだろうと考えたわけです。大きく言えばユング心理学でよく言われるような「死と再生」のプロセスが関連していると思うのですが,専門的な心理的援助を受けるでもなく「死と再生」がどうして起こってくるのか,そのあたりをもう少しひもといて行ければと考えて,いろいろと修論で取り組みきれなかった部分を膨らませているところです。