昨日,無料体験・公開講座「クリエイティヴ・セラピー」が終わりました。今年もたくさんの方にご参加いただき,アンケートも好感触でした。参加者にみなさんには,改めてこの場でも御礼申し上げます。ブログの方は,何かと忙しくて大幅に更新が遅れてしまいました。楽しみに読んでくださっている方,ごめんなさい。今回は,終わったばかりで,2週間後からまた連続講座が始まる「創作コラージュ療法」についてです。
「創作コラージュ療法」は,芸術療法(アートセラピー)と呼ばれる大きなカテゴリーに入りますが,一般的な芸術療法が「解釈しないことを原則とする」のに対して,「創作コラージュ療法」では,「積極的に投影分析的理解法を用いる」点で大きく異なります。「投影分析的理解法」とは,専門家が解釈を伝えるという一方向ではなく,投影分析の専門的知見を作者と共有してコラージュ作品に表れた気分状態・心理状態を一緒に理解していくという双方向のやりとりである点で,「解釈」と区別しています。これらの点により,カウンセリング/心理療法としての効果も,表現行為によるカタルシスだけでなく,作者(クライエント)自身の自己理解が深まることやそれを共有してもらえる感覚によって何倍にも高められると言えます。これらのことは,これまでも何度か説明してきましたが,後半は芸術療法(アートセラピー)という観点から書いてみます。
「芸術」とか「アート」と名前がつくことで,どうも一般的には芸術的な表現自体を行うものという認識が強いようです。それは,芸術療法を行う側にもそういう認識をもたせるような印象もあります。例えば,一般的な絵画やコラージュを用いている芸術療法の講座などでは,「きれいですね〜」「すてきですね〜」というような感想ぐらいしか言わないところが多いです。そして,実際のカウンセリング/心理療法でも,同じような反応をしているのでしょう。しかし,芸術療法はあくまでも心理療法の一種であり,療法としていかにクライエントさんの役に立つのかを追求するもののはずです。「芸術療法」とは,芸術分野における表現手段を用いて,心理療法として役立たせるものです。芸術的表現を楽しむのなら芸術を趣味として行えばいいことで,「絵画教室」とか「コラージュ教室」,あるいはサークルでいいでしょう。
芸術的な志向性が中心にある人が「芸術療法」をやると,どうしても芸術的表現が先に立ってしまう傾向があります。これは音楽療法などにも通じると思います。そうすると,どうしても自らの芸術的センスを発揮しようという感覚が潜在的に働くものです。特に,元々芸術家を志向していた方などはそこからなかなか離れられない傾向があります。心理療法の志向性が中心にある人が「芸術療法」をやると,いかにクライエントさんの役に立ち症状などを改善していくかというところに焦点が絞られます。創作コラージュ療法は,創始者の櫻井真澄先生が心理療法としていかにクライエントさんの役に立つかを追求してきた芸術療法(アートセラピー)だと理解していますし,創作コラージュ療法(クリエイティヴ・セラピー)が「正当派アート系セラピー」を名乗っているのも,そういう意味合いが込められているのだと思います。