また更新が遅くなってごめんなさい。ちょっと最近疲労が強いので,なかなか文章を書くのも大変になっています。最近は,1年半ぐらいやってきた古武術の習得の中で自分の身体の状態や動きがわかるようになってきて,姿勢とか動き方を修正していっているので,そういう影響もあるかも。まだ古い姿勢や動き方の癖が残っているので無理があったり,新しいやり方が入ってくると使わない部分を使ったりするので慣れるまでは疲れるかなという気はしてる。そんなわけで,今回は心理臨床と姿勢や動作に関する話。
心と身体というのは密接に関連していて,比較的無意識レベルの心の奥にあるものが,身体に表現されているということは,ちゃんと調べることができればかなりの相関をもっているはずだ。よく言われる例では,気が滅入ったり落ち込んでると,頭が下を向いて胸が引っ込み背中を丸めるような姿勢になる。逆に自信過剰で我が強すぎると,頭が上を向いて胸が張り出し背中が引っ込むような姿勢になる。漫画の描写を見ると,こういう特徴をもう少し極端にデフォルメしているのでわかりやすいけど,これは人を観察することを通して,表情に加えて姿勢で心理状態をより描写できるようにという作者の工夫に他ならないはず。もう少し専門的には,身体心理学と言われるようなジャンルで扱われている。まあ身体心理学といっても幅広いけれど,身体というものを通して心理的なアプローチを行うという点では一致していると言っていいかなと思う。
古典的なものでは,自律訓練法という技法が示唆的だと思う。自律訓練法は,ドイツの精神科医のシュルツが体系化していて,80年ぐらいの歴史があるけど,有効な技法として今でもカウンセリング/心理療法の現場や一部の心療内科などでも使われている。この技法の特徴的なところは,リラックスしている時の身体の状態をイメージ誘導(ある種の自己暗示)によって作りだすことで精神状態をリラックス状態にするところで,リラックスするように精神状態をもっていこうとせずに,精神的にリラックスしたときの身体状態に導くようにアプローチする点。実際,リラックスしようとして緊張した自分の心と戦うよりも,身体をリラックスした状態に持っていく方がよっぽど早い。自分なりに,身体をリラックスさせる方法をもっている人がいたら,試しに身体をリラックスさせることに集中したときに緊張とか不安を高められるかを実験してみるといい。
身体的愁訴に対して身体的アプローチを行っている人の中にも,「落ち込んだときこそ顔を上げて胸を張ってみよう」みたいなことを言っている人がいるけど,これは結構バカにできない。まあ健常〜軽い神経症レベルのクライエントさんには比較的有効だろうと思う。比較的重い人というのは,心理的な姿勢が習慣化していて,身体的な姿勢も習慣化しているので,姿勢の修正を指摘されても,それが本人の中で変な意味で自己一致しているので,なかなか心底から姿勢を修正しようということにはならない。それは,心理的アプローチにも言えると思うけど,自己一致というか自己完結しているようなあるパターンにはまっているクライエントさんは,治りたいと思っているにもかかわらずなかなか動くことができない。そこを動かして(というか,動いてもいいかなと思えるようにして)いけるかどうかが難しいところだし,カウンセリング/心理療法が上手くいくかの分岐点になるようにも思ってる。そのあたりは,カウンセラー/セラピストの心理的姿勢(恐らくは身体的姿勢も含まれる)にも深く関わってくることだと思うので,もう少し自分の中でまとまったらまた書きますね。