また更新が遅れてごめんなさい。最近,多忙が重なって疲れがなかなか抜けないので,文章を書くのがちょっと大変な感じでした。ここ数日,心身を休められたので,ようやく書ける感じになってきたかなというところ。と言いつつも,まだ風邪気味なんだけど,まあ少し頑張って書きますね。今回は,心身の症状と薬物療法について,考えていることを書いてみようと思ってます。
セラピスト自身の心身をケアすることが大事なのは,改めて言うまでもないことだけど,まず最低限クライエントさんの面接に穴を開けないということ,そしてセラピスト自身の問題を面接の場に持ち込まないこと。前者は主に体調管理ということになるし,後者は主に心理的なコンディションをコントロールできることが関係していることになる。でも,事はそれほど単純ではなくて,クライエント−セラピスト間で起こっている関係性が,セラピストの心身の状態に影響を与えているということもあるので,いわゆる世間的な自己管理とかコントロールということを重視しすぎると,方向がずれることがある。一般的な自己管理などのニュアンスは,起こっている心身の状態を抑圧的にコントロールすることに重点が置かれるように思うけど,クライエント−セラピスト間で起こっている関係性がセラピストに影響している場合に,その何らかの不調が抑圧されるのは好ましくない。セラピストは少なくとも,その心身の不調に対して気づき,抑圧的にならずにその不調と共にあるという姿勢を持っていることが,関係性やカウンセリング/心理療法の方向性に気づきをもたらしてくれる。
一般的な管理・コントロールをするという方向性を持つ,その最たるものが薬物療法だと思う。精神科系に限らず,身体の不調,身近なところでは風邪薬もその類だ。不快な症状を抑えて,一時的にでもその不快感を忘れることができる。でも,症状というのは本来,免疫系を中心とする身体の防御反応の表現であるので,その症状を抑圧することは必ずしも好結果をもたらすわけではない。例えば,風邪の発熱は免疫系を強化するための防御反応で,それを解熱剤で抑えるのは本来身体がもっている防御反応に反することになる。例えば,通常の下痢は身体に悪影響を与える細菌などが入ってきたものを早く体外に排泄するための防御反応で,それを下痢止めで抑えるのも本来的な防御反応を妨害する。うつ病なども,基本的には心理的なエネルギーが底をついているための様々な心身の防御反応だから,身体が鉛のように重くて動けないというのも,エネルギー回復のために活動を停止しようとしているから,抗うつ薬などで無理に気分を上げて活動できても,本来的な回復からは遠くなっているということになる。
カウンセリング/心理療法に訪れるクライエントさんの中には,薬物療法を受けているのに「ありのままの状態を見てもらった方がいいと思って,薬を飲まないできました」という人が時々いる。カウンセリング/心理療法に行ってみようと思うこと自体がクライエントさんの自己治癒力の表れとも言われるが,このようなエピソードはクライエントさんが本来の自分を取り戻そうとしている心理的な動きの表れだと思うので,好ましく思う。ただし,薬物療法を中断するのは,それでバランスを取ろうとしている土台を突然はずしてしまうようなものだから,かえって不調になってしまうのでやめましょうね。心身いずれの病気でも,抑圧ではあっても一時的に症状を軽減してくれて必要な活動ができたり,苦痛を緩和することで本来のエネルギー回復を助ける役目をすることもあるので,要はバランスがとれていることが大事。薬物療法が遅れてうつ病の症状が進んで自殺してしまったら何にもならない。僕は,薬物療法を否定する立場ではないので,それは誤解のないようにお願いします。今も,風邪薬飲んでブログを書いてるぐらいだし。でも,症状を抑圧するばかりでは,なかなか本来の自然治癒力を発揮することが難しいと思うし,カウンセリング/心理療法の場ではクライエントさんもセラピストも,症状に気づきそこに開かれていく態度が大切だと考えているということです。