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Blogger's Avatar  2011-5-18 22:10
 「こころの復興」をテーマに,Facebookとツイッターを始めていますが,物理的な復興に何年も必要なように,「こころの復興」も長い歳月が必要になると思います。皆さんが1日に1回でも何らかの形で,直接・間接に被災した自分や誰かの心に気持ちを向け続けることが,とても大切だと思います。Facebookとツイッターが,そのきっかけのひとつになっていくなら幸いです。できましたら,Facebookでの「いいね!」やツイッターへのフォローをしていただけると,とても励みになります。今回は,PTSDのお話をしたいと思います。
 PTSDとは,「(心的)外傷後ストレス障害」とも訳されるように,命に関わるような強烈な体験を直接・または目撃した後に,突然その場面の記憶が襲ってくるように想起されるフラッシュバックと言われる症状や,逆にその当時の体験を思い出せないのにその体験に似た刺激を回避してしまう症状などが出てきて,日常生活に支障が出るようなレベルのものを指します。PTSDの概念自体は一般にも知られてきていますが,正確には症状が1ヶ月未満のものはPTSDと呼ばすASD(急性ストレス障害)と呼びますし,日常的に体験しうるようなショックに対する反応(症状)はPTSDやASDとは呼ばれません。このあたりは,誤解が多いところだと思います。PTSDの研究は,アメリカで戦争から帰ってきた兵士に共通性のある症状が見られたことから始まったという歴史的経緯がありますので,原則的には戦争や大きな天災などの非日常的な体験を対象にする方が混乱が少ないと思います。
 PTSDにせよASDにせよ,それだけの強烈な体験をして様々な反応を起こすということは,当然起こりうる自然な反応です。ですから,本人も周囲も,そのような体験をしたら誰でもそういう症状が生じうる,無理もないことなのだと理解することが大切です。長期化して苦痛が続くようなら,心理療法なり薬物療法なり,専門家の援助を受けることで症状を緩和させることは重要ですが,病気という異常な状態ではなく,健康な人に当然起こりうる正常な反応として捉えることが重要だと思います。これは,PTSDに限りませんが,精神症状というものは,ある出来事や経緯があって,それに何とかして対処するために心(や脳)が反応した結果が少しこじれて日常生活に支障をきたしている,ということなのだと理解していただければと思います。
 被災地では,当初は当然ながらASDの症状が現れていたでしょうし,2ヶ月を過ぎた今は,PTSDと診断を受ける方もいらっしゃると思いますが,それはそれだけ大きな衝撃を受けた心が,その傷つきを表現していることの表れです。心が弱いからなるのではなく,タイミングが悪く大きな衝撃をかわし損ねたようなものです。その傷つきをきちんと受け止めてあげて,自分が大変な思いをしながらここまで乗り切ってきたことをねぎらってあげるようにしてほしいと思います。

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