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Blogger's Avatar  2011-7-23 17:10
 今月は大幅に更新が遅れてしまってごめんなさい。夏バテ気味だったのに加えて,ショックな出来事があって,なかなか文章を書くエネルギーが出てこない感じでした。「こころの復興」ということでFacebookの方でいろいろ書いてますが,個人的な感覚でも,心の深いレベルでの抑うつ感みたいなものがあって,ショックな出来事を受け止めきれないような感じですね。こういう時期に,なでしこジャパンがあきらめない心と強い結束で快挙を成し遂げたのは,日本全体に広がっている潜在的な抑うつ感を大きく払拭するんじゃないかと思っています。今回は,この結束ということについて書いてみます。
 「人間は一人で生きているんじゃない」というようなことは,いろいろなところで言われていると思いますが,孤独感というのはなかなかそういう観念的な言葉だけでは癒されないということも実感します。マズローの欲求階層説などでは「所属と愛の欲求」というのが第3段階にありますが,その後の「承認の欲求」「自己実現の欲求」なども対人関係や社会という人とのつながりを前提としているものですし,それらのどの段階でも孤独感というものが関連してくると言えます。逆に言えば,それらの欲求がすべて満たされない限り孤独感というものはなくならないとも言えます。しかし,全て満たされることはなかなか難しいことも現実です。そして,人間の欲求は通常,際限がなくなってくるものですから,どんなに満たされているように周囲からは見えても,本人は満たされていないということがよく起こっています。
 究極的には,老子の「足るを知るの足るは常に足る」という境地に至ることができれば楽になると思いますが,孤独感にさいなまれている人にこのような説法をしたところで,なかなかそういう気持ちにはなれないでしょう。それでも,この震災という大きな災害を経験すると,家族や友達が支えになっていることを実感できるようになる人が増えます。それが,震災後「心をひとつに」とか「絆」というキーワードが広まった現象につながっていると言えます。そして,なでしこジャパンが強い結束で,体格や実力が上といわれる相手をも凌駕したことは,自分の力ではどうにもならない自然災害を,結束する力で乗り越えようとする被災者の人々とも重なります。被災の後,日本代表として戦ったなでしこジャパンは,意識的にも無意識的にも,日本全体の心理的状態を反映していたと考えられますね。だからこそ,この震災を必ず乗り越えられるという気持ちにもつながるのだと感じています。
 被災した人々が集まる避難所もひとつのコミュニティなのですが,場所によって個人の集合という所があったり,コミュニティとして強いつながりができている所もあるようです。元々のコミュニティが機能する避難所もありますし,個人レベルまで分断されている避難所もあるようなので,被災者に責任があるわけではないですが,一緒にする活動を増やすなど,コミュニティを意識できるリーダー的な存在がいるだけで,集団がコミュニティとして機能するようになり,支え合っている感覚がもてることで心理状態も改善しやすくなります。キャプテンの澤選手というリーダーがいてこその結束だと思いますし,避難所を支え合える場にしていくためにも,コミュニティを育てるリーダーという視点を支援する側がもつことは,長期的な意味で重要だと思います。日本全体という意味では,国家のリーダーこそが重要なのですけれどね・・・

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