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Blogger's Avatar  2013-6-19 18:32
 先月は,プライベートでショックを受けるようなことが重なり,その対応などの影響でブログ更新をお休みする形になってしまいました。楽しみにしてくださっている方には,とても申し訳なく思っていますが,ご理解をいただければ幸いです。今回は,日本でも診断に用いられているDSMが改訂され,第5版(DSM-5)が出てきていますので,その中の発達障害に関するものをトピックとして書きたいと思います。
 DSMはもともとアメリカの精神医学における診断基準ですが,日本でもそれにならっています。5月に第5版が出版されていて,日本語版も近いうちに発売されるでしょう。発達障害の中でも,「広汎性発達障害」を中心にいくつもの分類があった自閉症系の診断名が,DSM-5では「自閉症スペクトラム障害」という診断名に統合されました。これに伴って,比較的軽度(軽度という表現にも議論がありますが)のアスペルガー障害やPDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)といった名称がなくなるために,これまでにこれらの診断名がついたような人が当てはまらなくなる可能性が指摘されています。「自閉症スペクトラム障害」に関する記述では,これまでに診断された人は除外されない旨が書かれているようですが,新たな診断基準のもとでは,特にPDD-NOSに該当する人の一部は当てはまらないということになりそうです。

 ただ,個人的には逆に当てはまる幅が広がることもあり得るんじゃないかと思っています。「自閉症スペクトラム」という概念は,ウィングという人が提唱した有名なもので,大ざっぱに言えば,自閉症の特徴に当てはまる一群がグラデーションのように濃淡がついているというイメージです。もちろん診断基準は明文化されているわけですが,このスペクトラムというイメージだと,すごく薄いグレーだけど自閉症のグループに入るよね,という感覚で入れられるということがありそうに思えます。実際的な問題として,発達障害に関しては,知的障害に比べると数値化される基準がないために,教育的・福祉的な支援の必要性から,便宜的に診断がつけられるような側面がありますので,これまでPDD-NOSが受け皿となっていた部分が,「自閉症スペクトラム障害」の薄いグレーに便宜上入れられていくということになるのではという感想を持っています。うがった見方をすれば,これまでに診断された人は除外されないという記述とも整合性がとれるわけですし,スペクトラムの概念を拡大解釈してしまえば,僕も当てはまるでしょうから,これまでより多くの人に診断がつく可能性もあると思います。

 ウィングの「自閉症スペクトラム」の概念は,拡大解釈すればの話ですが,誰もがスペクトラムのグラデーションに入りうるという意味で,健常者・障害者というカテゴリー分けではない発想をしやすい,言ってみれば個性の濃淡という感覚で自分の中にも自閉症的要素があるよねという,差別感覚を薄くして障害と言われる特性を持つ人への共感性を高める可能性を感じる概念で,個人的には好きな考え方です。ただ,DSM-5の「自閉症スペクトラム障害」というひとつの診断名になってしまうことで,重度の分類はあるようですが,その障害特性に応じた支援ということが見えづらくなるという意味では,支援する立場からするとちょっと疑問があります。まあ,発達障害は比較的新しい概念なので診断が難しく,医師によって診断名が違うといった問題も指摘されていましたし,結局は現場で特性を捉えて支援するのが通常ではありますが。ウィング自身は,特性による分類を提唱していたようですが,反映されなかったようですから,シンプルにして早めに支援の必要性を明らかにするという考えがあるのかもしれませんし,それなら歓迎すべきという側面もあるでしょう。まあ,現場では一人ひとりに向き合って支援をしていくだけですので,あまり診断名に振り回されないようにしていくことが大切だと思います。

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