忙しい中で猛暑にやられて,今回も更新が遅れてしまいました。ごめんなさい。今回は,9月29日に予定している「シャーマニック・コラージュ無料体験会」に関する解説をお届けします。近日中に「こころオフィス・盛田」のワークショップとして案内させていただきます。
いわゆる「コラージュ療法」は,アートセラピー(芸術療法)の一種として心理療法で活用されていますが,それは大きく分けて二つの流れがあると言えます。一つ目は,アートセラピーでは主流である,無意識が表現された作品を解釈することなく,そのものを大切にして無意識の働きを妨げずに眺めるというものです。無意識の働きを妨げないことで,自ずと癒しや気づきが生まれるとする考えです。二つ目は,比較的最近の流れとしての,無意識を積極的に解釈・分析するというもので,無意識の表現としての作品を読み取ってクライエントと共有することを通して心理療法に活かすことを主眼とするものです。どちらもそれぞれの良さがあると思いますが,無意識に対してのスタンスの違いがあります。
僕は10年以上,主として後者を学んでいましたが,ユング心理学を主軸におきその発展型であるプロセスワーク(プロセス指向心理学)を,同時期に並行して学んできた立場からすると,無意識という深く計り知れない豊かな内容を秘めた世界を,専門的な知識体系の枠組みにはめ込んでしまうような狭さを感じていました。これは志向性の違いであり,その試みを否定するものではありませんが,同じ無意識の世界にコンタクトしようとするプロセスワークとは大きく隔たりを感じていたのです。意識(自我)の立場で解釈・分析するような知識体系で無意識を知ろうとすることは,,氷山の一角に例えられる狭い場所から,水面の下の広大な氷山全体を知ろうとする困難さに似ています。
プロセスワークの立場では,無意識をある知識体系にはめ込むようなことはしません。無意識が何らかの形で表現されているプロセスを妨げず,それを促進するように増幅して,意識(自我)の側から解釈・分析するのではなく,無意識世界に入り込むようにしてその世界から無意識のプロセスを眺めるように理解します。例えば,夢を扱う場合には,夢の世界に入り込むように夢の人物になってみたりしながら,夢の世界が展開するに任せてそれを眺めるように理解していきます。明晰夢と言われる,眠った状態で夢を見ながら自覚を保ち,あたかも夢の一部になるような体験に近いものです。明晰夢の技法は,各地のシャーマンに伝統的に受け継がれており,プロセスワークはシャーマンの知見に多くを学んできました。
「シャーマニック(shamanic)」は,「シャーマン的」という意味になりますが,シャーマニック・コラージュは,作者の無意識の反映であるコラージュ世界に,作者自身がシャーマンのように参入し冒険するという体験へといざなう,アートセラピーの枠から飛び出したような,まったくの新しい技法です。前述した夢の例と同じように,コラージュも無意識の豊かな世界が視覚的なひとつの形として表現されたものです。作品として視覚化がされているために,夢に比べるとその世界は限定されますが,その分プロセスワークになじみがなくても体験しやすく,子どもが遊ぶような感覚で楽しみながら,深く豊かな気づきを得ることが可能になります。この気づきの醍醐味は体験するしかありません。楽しみましょう!
僕が長年学ぶ中で狭いところに閉じ込めようとしたコラージュ世界は,並行して長年学んでいたプロセスワークとは長い間交わることはなく,別々のものとして僕の中で分裂状態だったとも言えます。ごく一部しか見出されなかった無意識のコラージュ世界は,抑圧されたかのように苦しんでいたことでしょう。やがて,そのエネルギーは後述する経緯のように,抑圧し続ける自我の背景となっていた団体との関係性を共時的に解体させて,プロセスワークと出会うことで解放されました。シャーマニック・コラージュは,僕の12年にわたる学びの集大成です。この新しい技法が生み出されたことで,僕自身の心も解き放たれたようにとてもワクワクして,みなさんと素敵な体験を共有できる機会を楽しみにしています!