何かと忙しくなってしまい,なかなかブログ記事に手をつけられない状況で,いつも更新が遅れて申し訳なく思います。梅雨時期は天候や気温の変化が大きく,気がつかないうちに環境的なストレスが蓄積して心身の調子を崩しやすいので,ちょっとした心身の変化に注意していきましょう。今回は,法案が審議入りになった国家資格,「公認心理師」について書きたいと思います。
国家資格化の動き自体は,それこそ平成の時代と共に歩んできたという感じですから,相当長い年月が費やされてきたわけです。ある程度,具体的に法案という話が出たのは,10年ぐらい前に臨床心理士を国家資格にという動きが高まり,「二資格一法案」と言われた形で法案を作ろうと議論が交わされていましたが,諸団体の反対意見などから結局まとまりませんでした。その後も議論が進められていたのですが,6月に入って「公認心理師」法案が衆議院で審議入りして,いよいよ成立かという感じで,たくさんのブログやツイッターなどを通して,いろいろと意見交換などがされていますね。「二資格一法案」の時は,要は医療系とそれ以外の領域に分ける形でしたが,今回は「公認心理師」という形で一本化し,厚生労働省と文部科学省の両方が管轄するということです。ただし,臨床心理士がそのまま移行するというわけではなく,これまでの実績から関連団体を通して意見が取り入れられて,新たな国家資格ができることになると考えればいいでしょう。
現場サイドで国家資格化の声が一番大きいのが,医療機関に勤務する臨床心理士です。医療機関では主にチーム医療で医師を中心に各職種が連携協力しますが,ほぼ臨床心理士だけが民間資格で,保険診療の制度の中ではその専門性が担保されづらいので,働く上で様々な不都合が生じています。スクールカウンセラーや教育相談の現場では,国家資格でないからと言ってそれほどの不都合が生じるわけではないと思いますが,学校現場での専門職の位置づけという意味では,やや難しい立場で意見を述べづらくなるといった側面はあるように感じます。反面,両方の現場の話で聞こえてくるのは,臨床心理士の中には自分の専門性ばかりを主張したがって,それぞれの専門性を尊重して協力する姿勢に乏しいので,現場で浮いてしまっているというような話も聞こえてきます。組織の中にいるのに,個人開業しているような感覚で仕事をしていては,患者さんや子どもたちの不利益になることさえありますから,そういう点では養成課程についてもより多くの議論を重ねてほしいと思っています。
開業している立場としては,主に臨床心理士の関連団体から反対意見が出ているようですが,法案で主治医の指示が医療現場以外にも及ぶような表現をしている点が気になるところです。経験上,既に医療機関に通院していて来談するクライエントさんの主治医と連絡を取ったりしても,大きな方向性を希望として伝えられることはありますが,幸い臨床心理士としての専門性を尊重してくださって,あれこれ指示されたようなことはありませんでした。議論の中でも,そこまで他機関の業務について口出しするようなことは現実的ではないといった意見もありますが,教育相談の現場などでは保護者の意見を鵜呑みにするような形で子どもへの対応を強く指示してくる医師がいたという話も聞いています。その点では,法律の解釈によって強引に指示を出される可能性があるという懸念は残ります。とは言え,クライエントさんと各機関ごとの契約関係にあるはずなので,それを超えて強制というようなことは民法上できないようにも思います。そういった議論も整理されていくことを願いますが,何よりクライエントさんにとって最も適切なサポートが得られるように協力するという視点で,お互いに専門性を尊重した関係づくりをしていけるように,工夫していくことが一番大切なのではないかと思います。