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Blogger's Avatar  2014-7-27 23:21
 更新が遅くなってごめんなさい。今月は親類の葬儀があって,心身ともに消耗していました。ようやく調子が戻りつつあるところにこの暑さで参っています。梅雨明けして暑さが厳しくなっていますが,季節の変わり目で体調を崩しやすいので,気をつけていきましょう。今回は,最近考え始めている,シャーマニズムを参考にした心理的援助の方向性について,書いておきたいと思います。
 シャーマニズムが心理療法のルーツとされているというのは,今までも何度か書いてきましたが,シャーマンになる過程と,心理療法家になる過程というのは,類似点があります。シャーマンの場合,自分がバラバラに解体されるようなビジョンの体験があったり,憑依とか精神病のような状態に陥ったりします。心理療法家の場合は,それほど過酷な体験は少ないようですが,自身が抱えている心理的課題が浮上して不安定になってそれと取り組むような過程は,程度の差こそあれ,誰しも経験するようです。シャーマンの過程と比べて,現代の社会構造の中で行われるので,その枠組みがある分マイルドになるように思いますが,反面,未解決の課題が後になって浮上して,取り組む必要が出てきたりもしますので,トータルではあまり変わらないかもしれません。このような過程は,ユング心理学で言われる,象徴的な「死と再生」の過程になぞらえることができますが,シャーマンの場合は,象徴性を超えるほどの精神的な死を体験するという過程で,大きな役割転換を果たしますが,心理療法家はその都度「死と再生」を象徴的に体験することが多いと言えると思います。

 深層心理学系では,心理療法家になるトレーニングの一環で,この過程をしっかりと掘り下げることを重視します。いわば構造的に「死と再生」の過程を深いレベルまで展開させていくことで,自分のテーマへの取り組みが中途半端なままでクライエントさんのテーマを扱う弊害を最小限に抑えます。まあ,完璧にすべてのテーマがクリアできるなんてことはあり得ないので,自分のテーマをよく知って取り組み続ける姿勢を保つことが重要ということになりますが,これをやっているかどうかで適切な援助をできるかどうかは大きく変わってきます。シャーマンでも心理療法家でも,このような過程が重要になるのは,援助を必要とする人が抱えるテーマに取り組むために,援助者側が取り組んである程度クリアしたレベルでしか対応できないからです。前置きが長くなりましたが,現代人のテーマとしては,通過儀礼が形骸化したり消失して,社会的役割や個人の成長過程の転換期に必要な自己変容が進まず,適応困難になったりその葛藤から症状化したりすることが挙げられます。単純な例としては,大人になること,社会的役割が変わること,夫婦になること,親になることなど,様々な転換期があります。このような自己変容が必要な時に,深いレベルでサポートするのに,シャーマニズムが参考になると考えています。

 もちろん,シャーマニズムの文化的背景と現代人の転換期の文化的背景というのは大きく違いますので,その文化差を整理した上で,シャーマニズムがもつ優れた構造や要素を参考にしていくというアプローチになるでしょう。日本文化的な構造という点では,「道」がつくような芸事などの成長過程がなじむのではないかと思います。深層心理学系のトレーニング過程も,師弟関係のモデルに近いのですが,どうも師側になる人がその役割に飲み込まれてしまい,変な形で師匠然としすぎる傾向があり懸念されます。これは,本来の「道」の過程さえも形骸化してきて本質的な経験が乏しいことにあると思われます。シャーマニズムにおける師弟関係のあり方や,「道」における本来の師弟関係のあり方を問い直すことも大切でしょう。ちょっとまとまりが悪いのですが,転換期に対する自己変容をサポートするためには,カウンセリング/心理療法の構造でも可能なのですが,「道」を実践する「場」という本来的な「道場」的な構造の方が,主体的・積極的に取り組む姿勢ができやすいのではないかと,最近考えているところです。この方向性は,もう少し検討して,シャーマニック心理学協会の方で形にしていければと思います。

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