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Blogger's Avatar  2015-3-25 18:29
 春らしくなってきましたね。新年度に向けて,何かとお忙しい方も多いと思いますが,アクセスいただきありがとうございます。新年になってから,僕自身の個性化の形として,次々に新しい心理的サポートの形が出てきています。新年を機に,オフィスを「こころ道場」としてリニューアルしましたが,「こころ柔術」に加え,「きづき占術」という,無意識の気づきのために占いを活用する方向性を出しました。この過程で,「父性系臨床心理士」という形で,アイデンティティの転換があり,写真もそれに合わせて変えました,そこで,今回は「父性系」の意味を中心に書きたいと思います。
 臨床心理士や他のカウンセラーでもそうでしょうが,クライエントさんとの関わりは「母性」的になります。臨床心理士やカウンセラーの養成では,カウンセリング/心理療法をする姿勢として第一に,受容と共感,そし無条件の肯定的配慮という基本を学びます。これは,心理臨床においてとても根本的な,信頼関係を築くためにも重要ですし,傷ついた心の癒しやサポートとしては欠かせない基本姿勢です。これが身についていないカウンセラー/セラピストでは,ほとんど話になりません。この姿勢は,性別にかかわらず,心理的な意味での「母性」という自分の中にある心の力を,膨らませて働かせるものです。心理面接室が,赤ちゃんの保育器に例えられることがありますが,安全安心の場ですべてを受けとめてもらえる感じで悩みを聴いてもらえることが,とても心の支えになります。いろいろな困難やトラブルで傷ついた心を回復させるには,かなり重要なものですが,「母性」だけでは対応が難しいケースもたくさんあります。その場合,カウンセラー/セラピストは自分の中の良質な「父性」を膨らませて,充分に働かせる必要が出てきます。

 「母性」と「父性」とは,深層心理学で比較的よく使われる言葉で,性別を問わず心の中に育まれる,車の両輪のような生きるための力のことです。「母性」とは,単純に言うと包容力だと言えます。すべてを包みこみ受け容れますが,呑み込んで離さないという方向にも働きます。「父性」というのは,単純に言うと「自立力」だと言えます。守られた場所から自立して,他者や社会の中で生きる力と言えます。「母性」だけだと,依存心が強くなってカウンセラー/セラピストから離れられなくなったり,カウンセラー/セラピストが抱え込んで離さないように無意識に関わってしまったり,ということが起こりがちです。カウンセラー/セラピストが,良質な「父性」を育んでおかなければ,クライエントさんの「自立力」が育まれず,なかなか他者や社会の中で生きる力がつきません。不登校や引きこもり,対人恐怖や社会恐怖などが増えているのは,本人に「父性」が育まれていないことと,周囲や援助者に「父性」的な関わりが欠けているのが大きな要因です。

しかし,臨床心理士を含め,カウンセラー/セラピストの養成課程では,残念なことにあまり「父性」的な関わりについて学ぶことがありません。もちろん,良い指導者に恵まれれば,「父性」を育むこともできますが,学ぶ機会というのはかなり少ないため,「母性」的な関わりしか知らないカウンセラー/セラピストが多いのです。「母性」による癒しで「自信」(自己信頼)を回復した上で,「父性」的な後押しで他者や社会と関わる「勇気」がもてる心の力を養うことが大切です。「後押し」と書いたように,「父性」は失敗を恐れずに挑戦することで「成長」していくことを応援します。他者や社会の中で生きる力が乏しいのは,「失敗」できないことが大きな要因です。「失敗」に直面し乗り越えた経験がなければ,「失敗」を怖れて前に進めなくなります。河合隼雄先生が日本のありようを「母性社会」と呼んだように,家庭や社会に「母性」が強いあまり,「失敗」できない人々が増えています。そのバランスをとるために,良質な「父性」を前面に出して,僕は「父性系臨床心理士」をアイデンティティとすることにしたのです。

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