梅雨が明けたらいきなり猛暑で,ちょっと身体がついていかない感じがしています。それとともに何かと頼まれたりして動くことが増えていて,世界と関わる最近の変化に心がまだ追いついていないような感じです。そんなこんなで更新が遅れてしまって,ごめんなさい。暑さはしばらく続くでしょうから,みなさんも心身の変化を感じとってケアしていってくださいね。今回は,最近よく考えるようになった多様性と自己成長について書きます。
「多様性」というのは,この記事では様々な価値観に開かれていることを意味しています。多様性について語られるとき,時々見かけるのはあらゆる価値観を肯定するというような強迫観念に陥ることですが,自分と異なる価値観をただ「否定しない」という態度が大切だと思います。自分と異なる価値観も,相手にとっては大切な価値観なので,ただそこに「違いがある」というだけです。カウンセラー/セラピストの態度で「無条件の肯定的配慮」というのがありますが,そこにはまるとクライエントさんの価値観を肯定しなければならないと思う人もいます。でも,そのためにそれと異なる自分の価値観を押し込めると,「自己一致」からは離れてしまいます。お互いの価値観に「違いがある」と認めた上で,クライエントさんの話に耳を傾けてその価値観を尊重し,理解しようとする態度が大切になります。この辺を間違えると,自分を押し殺してカウンセラー/セラピストを演じるようなことが起こるので,注意が必要ですね。
「多様性」は,カウンセラー/セラピストをやっていると避けては通れません。それは,クライエントさんが特にマイノリティ(少数派)の価値観を持っているときに,面接場面の関係性に影響を与えるからです。単純な例としては,「離婚は絶対ダメ」という価値観があるカウンセラー/セラピストのもとに「離婚したい」という悩みを抱えたクライエントさんが来談することなどは,よくあります。特にこのような社会的あるいは倫理的な価値観が絡むと,カウンセラー/セラピスト自身の価値観とも向き合う必要が出てきます。この「離婚したい」という悩みの背景に,「離婚してはいけない」という内面化された社会的な批判者がいることは多く,カウンセラー/セラピストが「離婚は絶対ダメ」という価値観と向き合えていないと,クライエントさんの背景にある批判者の役割を負うことになります。説教してしまうなどは論外としても,無理に受容・共感しようとしても非言語的に批判的なニュアンスが出てしまいがちです。もし,「離婚は絶対ダメ」の背景にカウンセラー/セラピスト自身の両親の離婚が影を落としていたりすると,さらに複雑になります。このような意味で,カウンセラー/セラピストは,自分の価値観と向き合いその背景までよく理解していていることが大切になります。
ここでは,カウンセラー/セラピストとしての例を挙げましたが,このように自分の価値観と向き合い多様性に開かれていくことは,「自己成長」につながっていきます。カウンセラー/セラピストとしてだけでなく,一個人の人格的成長でもあります。「自己成長」というのは,何らかの葛藤状況と向き合うことで進んでいきますが,葛藤状況の中には,何らかの価値観の違いが含まれています。「違いがある」ことに気づいて,自分とは違う価値観との出会いを楽しめるような感覚が生まれると,心の器が広がっていきます。自分の価値観に凝り固まると,自分と違う価値観は自分の守ってきたものを脅かすものとして映るので,それを排除し攻撃しようとします。これが個人間のトラブルや民族紛争,果ては戦争にまで波及します。たくさんの人が「多様性」に開かれていき,「自己成長」していくようになることは,より心豊かに暮らせる世界を共に作っていくことにもつながります。少し大きな話になりましたが,僕が学び実践しているプロセスワークは,この「多様性」にとても開かれていて,世界にも目を向けています。そして,「自己成長」をサポートするためには,僕自身が自分の中にある様々な価値観と向き合って「多様性」に開かれていくことが重要なので,さらに研鑽を深めていきたいと思います。