関東では暑さも一段落という感じですが,台風が続々とやってくるので何か落ちつかない感じもあります。僕の方は,今月は関わっていることが増えたり,運営しているサイトたちのリニューアルや再構成に動き始めたり,何かと忙しくなって更新がまた月末になってしまいました。お待たせしてしまってごめんなさい。今回は,今後の方向性の展開にも関わりますので,運命学(占い)と心理学の接点について書きたいと思います。
占いに対して,心理学的に最も関心を寄せたのは,ユングが先駆けでしょう。東洋占術師をしていた僕が,心理的なアプローチに関心を持ち始めた頃,河合隼雄先生の著書を通じてユング心理学と出会い,運命学と心理学の融合を構想し始めたという経緯もあります。ユングは,シンクロニシティ(共時性)と呼ぶ,意味のある偶然の一致という現象を研究し始めて,中国の易占などを学んで実践していたそうですが,もともとは心理臨床の中で起こる偶然の一致が,心理療法の展開に深く関わっていることを見出した経験から始まっています。この共時性は,そういう視点をもっていないと気づきづらいですが,多くのカウンセラー/セラピストが頻繁に経験するのは,クライエントさんの心理的なテーマとカウンセラー/セラピストのテーマが重なり合うことです。もちろん,環境や方向性はそれぞれ異なるのですが,カウンセラー/セラピストが自身の心理的テーマに取り組み,その中で得られる深層心理的な気づきが深まることで,クライエントさんの気づきも深まっていくということが言えます。占い師として相談を受けた経験を通しても,同様のことは多くありました。最近,占いの依頼も増えてきていますが,心理的なアプローチを加えてからは,それを以前より強く感じるようになりました。
僕が臨床心理学を学んできた中で,最初の頃から得意だったことのひとつが,描画法の分析・解釈でした。例えば,バウムテストを解釈するとき,根とか幹とか枝とか樹冠とか,いくつかも要素の傾向がそれぞれあって,場合によっては要素間で矛盾するものを総合的に解釈するわけです。占いでも,例えば手相の鑑定をする場合には,生命線・知能線・感情線・運命線といったそれぞれの要素の傾向があって,これも要素間の矛盾を含めて総合的に鑑定していきます。占星術でもタロットでも,多くの占いは実践を通して多くの要素を俯瞰して関連性を見出してつないでいく能力が磨かれます。描画法では,風景構成法でも統合的HTPでも,やはり同様の能力が必要になるので,僕の中ではほとんど違和感を感じなかったのです。学術的な見地からは,一緒にすると怒られるかもしれませんが,実践者としての感覚はかなり共通しています。そして,どちらもパーソナリティ傾向や心理的な傾向を把握する手段であるという共通点があり,自己理解を深めることにもつながります。僕の感覚では,カウンセリング/心理療法では心理的サポート,占いには運命的サポートという支援の方向性が少し違うぐらいなのです。
ユング心理学ではコンステレーション(布置)を読むということが重視されますが,これは星座に例えられ,話を聴いていく中で,クライエントさんの生育歴や今の環境で起こっていること,カウンセラー/セラピスト自身のテーマを含み心理面接の場で起こっていることなどを俯瞰し,その連関が星座のようにつながって意味が浮かび上がることで,面接の流れが進展していきます。これも,前述した描画法の例と似ているので,僕の中で違和感なく身につけることができました。臨床心理学も占いも,元をたどればシャーマニズムに起源があるわけですから,共通点が多いのは当然とも言えるわけです。占いというと,霊感とかオカルト的に捉えられることもありますが,発展してきた中には,原始的な統計学のようなもので数千年にわたって研究されてきた成果があります。占いをしていても,臨床心理学の知識や技法は役立ちますし,カウンセリング/心理療法をしていても,運命と呼ぶしかないような共時的な出来事が起こって,クライエントさんが成長する契機になったりします。運命学(占い)と心理学,両者がお互いを学び活かしていくことは有益だと思いますし,両者を10年以上学び実践してきた経験から,僕なりに両者を融合して進化させていきたいと考えています。