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Blogger's Avatar  2016-9-28 21:58
 今月は,夏休みをいただいていたこともあり,更新が遅れてしまいごめんなさい。慣れないツアー旅行だったので結構疲れましたが,気分的にはリフレッシュできた感じです。非日常の時間で,自然に触れながら過ごせる場所がやっぱり僕には合っていると感じました。自分に合ったリフレッシュの仕方を見つけておくことは,メンタルヘルスにもいい効果がありますので,心がけてみてくださいね。今回は,心理臨床家の社会性について書きたいと思います。
 心理臨床家というのは,基本的にはモデルが個人開業になっています。臨床心理学の理論や技法の創始者は,ほとんど個人開業的に活動していた人ですし,臨床実践を通して独自の理論や技法を編み出していますから,オリエンテーションが明確であるほど,個人開業がモデルになりやすいと言えます。一方,臨床心理士として仕事を探す場合,多くの人は何らかの形で雇用されることが多くなりますが,スクールカウンセラーにしても病院等の心理職にしても,ひとり職場と呼ばれる形が多く,一緒に働いて先輩の指導を受けられる職場は比較的少ないと思います。先輩などのモデルがない状況の中で,他職種との連携が重要になるのはほとんど共通していますから,何かと摩擦が起こりやすくなります。ここでキーワードになる大きな要素が「社会性」だと思います。多くの臨床心理士は,大学院を修了して初めて社会に出ることになります。専門家としての教育を受けながら個人開業のモデルしかイメージがない中で,ひとり職場に入る場合を考えると,他職種との連携することに困難が生じやすいと言えます。これが上手くいかないと,連携自体が上手く機能しないので,学校にせよ病院にせよ,組織としての機能を発揮することが難しくなりクライエントさんの不利益にもつながります。

 「社会性」というのは一般的に,会社などの組織で協業する中で大変さや失敗などを通して先輩の助言や指導を受けながら,少しずつ身につけていくものだと思います。僕自身は社会人から臨床心理士を目指したこともあり,比較的自然に社会性を身につけてからのスタートだったのは幸いだと感じています。普通に学部から大学院を目指していく人たちには,その過程でアルバイトなどの形である程度長期で働いて,社会経験を積むことを勧めています。僕は個人開業もしていますが,教育相談の現場に10年以上勤務してきました。他の現場の話を含めて,その人の社会性とケースへの取り組み方や他職種との連携やコミュニケーションの取り方などを見ていると,やはり社会性が乏しい人は連携が難しい傾向が強く出ます。もちろん,個人の特性などもあるので,社会経験をしたからといって確実に社会性が身につくとは限りませんが,社会性を身につけたいと思ったら社会経験は不可欠でしょう。教育相談などの母子並行面接を例に挙げても,心理職側がその専門性からの見解を押し通そうとしたりすると,連携が上手くいかずにケース自体も展開がおかしくなるようなことはよく見られます。社会性が身につかないまま,専門性に凝り固まってしまうと,組織の一員としては不適格ということにもなりかねません。

 また,個人開業モデルを実現するのに,個人開業でやっていくから社会性は必要ないと考える方もいるかもしれませんが,かなりマニアックな領域に限定されると思います。例えば,職場の人間関係の大変さを聴いて共感するという程度でも,ある程度は社会人として組織で働いた中で人間関係の大変さを経験していないと,想像すら難しくなります。僕がお会いしてきたクライエントさんの中にも,他のカウンセラー/セラピストに職場の大変さを話したのにピントがはずれたような答えをされて困惑したり怒りを覚えたりしたという話をされる方が時々いらっしゃいます。共感の深さは想像力にかかっているので,ある程度は社会で生きる苦悩を体験していないと,想像力の元がない状態なので共感が難しくなります。EAP関係の会社の求人の条件に,企業などでの勤務経験を挙げているところが増えているのは,社会性の重要性を示しているように思います。遅刻を繰り返すなどは論外としても,連携が円滑にできるように信頼関係を築いていくことは,心理臨床におけるラポール形成の基本でもあります。専門性だけに埋没せず,心理臨床以外の趣味などの活動を広げたり様々な人間関係を通して,心理臨床家自身が社会性を高め成長していくことが,ひいてはクライエントさんのためにもつながると感じています。

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