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Blogger's Avatar  2017-7-28 23:24
 梅雨が明ける前から暑い日が続いていますね。今年は,一段と季節の変わり方が急な気がします。体が対応しきれず,自律神経が乱れやすいので,心身の変調に注意してくださいね。寝苦しさが大きくなるので,快適な睡眠がとれる環境を工夫することをお勧めします。今月は,諸事情から更新が遅くなってしまいましたが,見聞きしていることから思うところがあって,組織の中の心理職の専門性という点から考えていることを書きたいと思います。
 以前,社会性について書いたことがありますが,臨床心理士は大学院を修了して臨床心理学などの専門性を身につけてはいるものの,職業的なモデルが個人開業的な要素が強いために,社会性が身についていないというような話を割とよく耳にします。また,スクールカウンセラーや多くの病院系の心理職なども,ひとり職場と言われますが,同じ日に勤務する同職種の同僚や先輩がいないことでモデルができづらいこともあります。ただ,ひとり職場の場合は,他職種との専門性を尊重し合うという意識があれば,その中で心理の専門性をいかに理解してもらいどのように活かされるかという点は課題になるものの,組織の中の専門性という側面はその個人のあり方に絞られますので,大きな弊害にはなりづらいかもしれないと感じています。もちろん,ひとり職場の専門性についても,前述した課題について考えていきたいので,また改めて書く機会を作りたいと思っていますが,今回は,複数の心理の同職種が勤務している場合に,ひとりが専門性に拘泥してしまう弊害に焦点を当てたいと思います。内容は,僕自身の勤務経験もありますし,他の職場の話を聞いたり相談を受けたりしたことを含めて,総合的に書いていることをご理解いただければと思います。

 組織の中で,専門職が勤務する場合に,もちろんその専門性を発揮することが期待されるわけですが,それはその組織全体がもつ機能が充分に発揮されることが前提になります。複数の心理職がいて,それぞれの専門性をもっていますが,オリエンテーション(学派などの方向性)は自分のケースの関わりの中で発揮することが望ましいといえます。反面,専門性が個人の信念のようになって拘泥すると,自分のケースのことしか考えず,周囲への影響に配慮が及ばないことになりがちです。例えば,相談の時間枠を設定していると,ひとりがもてる枠の数は限られています。その範囲でケースの予約を配分するので,全体のケース数が許容量を超えてくると,予約の頻度を減らさざるを得ません。医療機関や事業体であれば何ヶ月待ちという話になるのですが,公的機関になると申込があれば受け付けないわけにはいきません。そのような中で自分の予約だけは頻度を詰めるということは,他の心理職のケースが増えるので枠数を圧迫して,さらに頻度を減らさないと対応できなくなります。全体の相談機能としては,バランスが崩れてしまうわけです。また,自分の専門性に拘泥するあまり,全体の相談体制に対しても自分に都合のいいような提案を始めたりして,全体で考えて長期間かけて作ってきた体制が崩れたり混乱するなど,独りよがりの専門性になっている例が結構見られます。

個人同士でも,他の心理職のケース対応等について気に入らないと強く非難したり,他職種の対応をコントロールしようと持論を展開したり,という話は意外とあります。ひとつのケースに複数の専門性で関わる場合,チームとしての機能が重要です。例えば,母子並行面接で,母子の担当それぞれの協力関係が上手くいかないとケースが円滑に進みませんし,クライエント母子の関係性が担当者間の関係性と無意識下でリンクしてきたりしますので,ケース自体も混乱しやすくなります。また,同職種への非難などはたいてい新人や後輩に対してされますので,萎縮したり迷いが出て自然体でケースにあたることを阻害します。内容が理不尽だったりすると,パワハラに該当する場合もありますので,組織の雰囲気自体も悪くなります。言われた本人が望んで指導を仰いでのことならまだしも,よく知らないケースについて断片を見聞きしただけで非難したりするということなので,自分が専門性だと信じているものを押しつけているだけになります。このあたりまで来ると,専門性と言うよりも,パーソナリティ的な問題もあるとも感じますが,専門性というところに拘泥するあまり,一種の自我肥大化を起こしてしまい,全体が見えなくなって自分の専門性の正しさを主張したい方向に硬化してしまうように思われます。背景には,ユングが言うようなコンプレックスの影響も考えられますし,他者の批判や分析をする前に,自己分析や自分の状態への気づきを高めていくことが重要だと改めて感じています。専門家であっても,自分のことは見えなくなりやすいので,普段からチェックしている姿勢が大切ですね。

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