更新が月末ギリギリになってしまい,お待たせしてすみません。猛暑続きで,熱中症にならないように何とか踏みとどまっていますが,自律神経が不安定になっている感じで,体調があまり良くないことが多いので,仕事に支障が出ないように,なるべく休養を取っています。みなさんも,熱中症などにはできる限り注意して予防対策をしてくださいね。今回は,ブログの冒頭でよく触れている自律神経のことや自律訓練法というアプローチについて書きたいと思います。
最近になって,自律神経について書籍やテレビで取り上げられることが増えているようなので,基本的なことは多くの方に知られるようになってきたと思います。医師ではないので,臨床心理士としてみた自律神経の話題という感じで,僕の感覚と経験を踏まえた説明の仕方になっていますので,その点はご理解をいただきたいと思います。自律神経は,交感神経と副交感神経の働きに分けられ,主に内臓の働きや血流・発汗などを調整して,ホメオスタシス(生体恒常性)を保ち,体を環境に適応させて正常に活動できるようにする働きがあります。交感神経と副交感神経は,それぞれアクセルとブレーキに例えられたりますが,交感神経は活動するときに,副交感神経は休養するときに,優位になると考えておけばいいでしょう。この関係は,シーソーのようにどちらかが優位になり,それをスムーズに切り替えられるのが,正常な状態といえます。いわゆる「自律神経失調症」という状態は,これがスムーズに切り替えられず,交感神経が優位のままになって,副交感神経に切り替えられなくなった状態と言われています。副交感神経優位に切り替わらないと,頭がずっと働いているような状態など神経が高ぶってしまい,なかなか眠りにつけないとか,眠りが浅くなるということが起こってきます。「自律神経失調症」の症状は多岐にわたりますが,睡眠は副交感神経の働きが大きいので,睡眠の変化はひとつの目安になると思います。
自律神経を僕が説明するときは,動物が戦うか逃げるときに交感神経が働き,それ以外は副交感神経が働くと,動物園の動物などを例に挙げています。人間も哺乳類に分類される動物の一種なので,生体の維持という観点からは動物の体の働きとあまり変わらないはずです。動物園の動物を見ていてもわかるように,ほとんど目立った活動がなく休んでいます。これは,リラックスした副交感神経優位の状態と言えます。野生の動物でも,狩りをしたり天敵から逃げるときなどは交感神経優位となり,体が最大限に動くように自律神経が切り替わりますが,それ以外はリラックスして寝ていたりいます。本来的に,交感神経というのはずっと働くようにはできていません。それに対して,人間の生活は,長時間の集中が必要な仕事をするなど,常に気を張っている活動状態になりがちで,交感神経優位の状態が続きやすいので,本来的な動物の自律神経の働きとは異なるため,スムーズに副交感神経に切り替わりづらい状態にあると考えられます。そこにストレスが加わると,常に戦闘状態あるいは逃走状態になるので,副交感神経がほとんど働かなくなって,体に様々な変調が起こってきます。交感神経優位が続くと,交感神経は本来そう長く働かせられるものではないので,糸が切れたように活動できなくなり,無気力状態に陥ることもあります。
自律神経失調症が続くと,うつ病などの精神疾患に移行したりすることも多くあるので,自律神経の変調に早い時期に気づくことが重要といえます。自律神経の変調は,前述したように副交感神経優位の状態に戻らなくなっていることが大きな要因なので,リラクセーションなどで副交感神経を働かせるような習慣を身につけることが必要になります。カウンセリング/心理療法の技法の中では,「自律訓練法」が代表的なものになります。やり方は,検索すれば簡単に見つかると思いますが,効果を実感するためには実際に専門家に受けた方がいいでしょう。「自律訓練法」は,催眠に近い技法で暗示的に身体感覚を用いた誘導を行うので,信頼できる専門家に受けた方が入りやすくなります。その名の通り,自律神経を整える技法で,感覚を身につけてしまえば,自分ひとりで使えるようになります。僕の場合は,呼吸法やイメージを組み合わせて,より効果的な方法を身につけられるように工夫しています。「自律訓練法」以外でも,基本的には自分がリラックスして頭が空っぽになり,よく眠れる状態になれればいいので,普段から自分に合ったリラクセーション法を見つけて習慣づけておくのがいいと思います。自律神経が乱れやすい時期でもあるので,みなさんがより良くやりたい活動ができるように,自律神経を整えるような習慣づくりをお勧めします。