2月のブログも,更新が遅くなってしまい,3月にずれ込んでしまいました。確定申告の作業を含めて,いろいろと忙しくバタバタと過ごしており,なかなか長文を書く余裕がもてない状況です。お待たせして申し訳ありませんが,ご理解いただければ幸いです。さて,2月20日に公認心理師の登録証を受け取り,正式に公認心理師を名乗ることができるようになりました。医師の指示を受ける点での検討は,各所で行われていると聞いていますので,この問題について書きたいと思います。
公認心理師は,カウンセリング/心理療法に際してクライエント(相談者)に主治医がいる場合,その指示を受けることが原則として義務づけられています。公認心理師法の第42条2項に,「公認心理師は,その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは,その指示を受けなければならない」とあり,法的な縛りが生じます。これに関して,文部科学省・厚生労働省の担当者連名で「公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について」という文書が出ており,現状では,この運用基準に基づいて,医師の指示を受ける必要性や合理性について判断していくことになります。ただ,この運用基準も個別の相談機関の特性や諸事情を考えると,必ずしも明確でない部分があり,現場で判断していく必要が出てくるように感じています。
ひとつは,「当該支援に係る主治の医師」をどこまで含めるのかという問題です。例えば,僕が長年非常勤で従事している教育相談では,子どもたちの心理的支援を行っていますが,医療機関にかかっていて発達障害の診断を受けているという場合に,プレイセラピーを行うとして,その支援には心理的な側面と教育的な側面が混在してきます。主訴が不登校や不適応という場合に,教育相談的には発達障害の特性を理解した上で,特別支援教育などの教育的な支援として何が適切かという検討が中心になります。発達障害による心理的な二次障害が出ている場合は,心理的な支援という側面が強くなりますが,それは主訴の副次的な側面という場合があるため,発達障害の診断を出したからといって「当該支援に係る主治の医師」に当たるかどうかというのは微妙なところです。開業領域でも,カウンセリングの主訴が,医療機関でかかっている主訴と異なる場合もありますし,複合的であったり,カウンセリングが進むにつれて変化していったりしますので,この場合でも判断が微妙なケースがいろいろと想定されます。
もうひとつは,クライエント(相談者)が主治医の関与を望まない場合です。運用基準には,「要支援者が主治の医師の関与を望まない場合,公認心理師は,要支援者の心情に配慮しつつ,主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。」とあるのですが,それでも主治医の関与を望まない場合については,記載がありません。最優先されるべきは,クライエントの利益を守ることであり,そのために公認心理師法があるという前提を考えるなら,説明を受けてもクライエントが主治医の関与を望まないからといって,カウンセリングを引き受けないという選択肢はありません。公的機関としての教育相談の方がわかりやすいかもしれませんが,公的機関として,主治医の関与を望まないからといって,相談を受けないということはあり得ないことです。主治医の治療方針に納得がいっていないと話すクライエントや相談者も実際には結構な割合でいるので,主治医の関与に同意しなくても,不利益を被ることがないように,最大限の配慮をすることが重要だと考えられます。このように,実際に運用されると現場レベルでは様々な混乱や二律背反の問題が生じることが予想されるのです。