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Blogger's Avatar  2019-6-30 23:22
 このところ,プライベートで何かと忙しさに拍車がかかっていて,なかなかブログの更新に手が回らず,月末ギリギリになって何とか書いている状況です。お待たせして申し訳ありませんが,ご理解いただければ幸いです。今回は,日本心理臨床学会の自主シンポジウム「開業臨床と公認心理師」にて話題提供者として,公認心理師法における医師の指示問題について話しましたので,そのことを書きたいと思います。
 以前にも,この自主シンポジウムに向けて,医師の指示問題に関してブログで大まかな方向性について書いたのですが,その中のクライエント(相談者)が主治医の関与を望まない場合を論じたように,基本的には同じような内容になりました。公認心理師法の規定や運用基準の議論については,3月1日付のブログ記事をご参照ください。クライエントの利益を守ることを最優先にするという主旨で,発表の中ではさらに論理的な展開に構成して,民法上の準委任契約や患者の自己決定権などに基づいて話していきました。概要としては,医療機関で医師が行う診療も公認心理師が行うカウンセリング/心理療法も,民法上の準委任契約にあたり,それぞれが別個の契約と見なされること,それを前提として,患者(クライエント)の自己決定権が優先されるように進めていくような方向です。法律的なことは僕も素人ですが,いろいろと調べた上でポイントを絞って構成したものの,臨床心理士など心理の専門家がその場で理解するには難しい側面があったかもしれません。それでも,アンケートを見ると概ね理解していただいた様子でホッとしました。

 議論としては,他の話題提供者はまた別のテーマ(倫理,連携)で発表しており,事例を提示しながらの発表もあったので,その事例に関連する開業臨床ならではの話などが多かったように思います。医師の指示についても,指定討論者を含めていくつか質問が出ていましたが,医師との連携に際しての実務的な部分と関連していたり,自殺などの緊急性が高い場合にどう扱うのかといった部分でした。来場者も,開業している人もいれば,開業はしていないけれど関心があったり将来的に考えている人など,様々でしたので,質問もバリエーションに富んでいたように感じています。法律的な問題は,どう解釈するのかは最終的に裁判で争われて判例があれば,それに基づくことになるようですが,公認心理師法はできたばかりでその解釈については,結局のところ今後の運用の中で検討されていくのではないかと思います。僕の発表は試論といったところですが,医療関連の判例などを参照している論文などから展開していますので,総論としては大きな齟齬はないと思います。それでも,個別の事例などはもっと複雑になると思いますし,各論的なところでは今後どのようなトラブルが生じるかによっても変わってくるだろうと感じています。

 開業臨床という経営者的な視点からは,法に基づいて違反とならないようにリスクマネジメントをしていくというのも,必要なことです。法律は門外漢で難しく,なかなか複雑な問題ではありますが,しっかり考えておかずにトラブルに発展することも,クライエントの利益を損なうことになってしまいます。非常勤先でも,僕が中心となって医師の指示が及ぶ可能性について,心理以外の職員に説明して対応できるように進めていますが,他の場所の話を聞くと,そういう動きをとっているところはあまり耳にしません。まあ,僕も立場的に上で問題意識をもっているので動いていますが,普通の非常勤などは様子を見ているというところなのかなと思います。実際問題として,僕が連携してきた医師は心理的専門性にも一定の理解をしていただいていますし,余程おかしなことをしなければトラブルになることは少ないと思います。それでも,非常勤先では医師が教育など領域の異なる部分にまで意見をすることも散見されますので,開業臨床というだけでなく,相談機関などで働いている公認心理師は,ある程度の危機意識をもっていくことが大切なのではないかと思います。

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