駆け出しの僕が偉そうにいうことではないですが,「想像力」「創造性」「観察眼」だと思います。もちろん,人間存在への基本的な信頼が根底にあることが前提としての話ですが。クライエントさんの心の自然治癒力というか,生きる力というか,それを信頼できない人には心理的援助は無理だと思います。
「想像力」,これがないと共感も何もあり得ません。クライエントさんの話を聴いてその状況やその気持ちを想像できないと,共感することなんてできないと僕は思います。自分の経験を当てはめるのではなく,クライエントさんの性格やその状況を把握して,この人だったらどう感じるだろう,どんな気持ちだろうと,想像して感じ取っていくのが共感だと思います。
「創造性」,これがないと心理面接がパターン化してしまいます。クライエントさんは一人ひとり違う存在で,同じクライエントさんでも会うたびに違います。それを,パターン化して捉えてしまうと,だんだんクライエントさんの実態とずれてくるように思います。人間というのはパターン化することで情報を整理して処理を効率化していますので,創造性というのはある意味でそれに逆行します。流されてしまうとついついパターン化しがちですが,自戒を込めて,1セッションごとに創造性を発揮していくのがクライエントさんのためにもなると思っています。
「観察眼」,これはクライエントさんに対しても,セラピスト自身に対しても向けられる必要があります。クライエントさんに対しては当然,表情や仕草などの非言語的な情報までを含めて捉えていく必要がありますし,セラピスト自身に対しては逆転移を含めてセラピストの心身に何が起こっているかに注意を払っておかないと,心理面接の場が壊れかねない事態に発展する危険性があります。また,ユング的に考えれば,セラピスト自身の体験に対する気づきをきっかけにしてクライエントさんの理解に役立つこともあります。
知識や技法は努力して身につけることができるのですが,この3つは適性の部類に入るのではないかと思って挙げてみました。また,ついつい見失いがちな部分でもあると思うので,心構えという意味でも使えるかなと思っています。